投稿日 2018-09-09 / 最終更新日 2021-01-02
こんにちは、樹咲です。
今日は再び『宇宙兄弟』のキャラクターたちについて書きたいと思います。
何度も何度も書いているのですが、『宇宙兄弟』のキャラクターたちは現実に本当に存在しているような人たちばかりですよね。
例え数ページの登場でも、名前が出てこない人でも、強く印象に残っているキャラクターたち。
それはきっと、小山先生の中で「その人」が「宇宙兄弟の世界」で生きているからなのだろうなあと感じます。
作品の外でも、彼らは「生きて」いる
キャラクターが「生きている」。
現在私は公式サイトでキャラクター紹介を書かせていただいているのですが、一人一人のちょっとした表情やセリフ、仕草などから見えるその人物の「背景」を想像すると一人一人筆が止まらず、ついつい文字量が増えすぎてしまって文章を削る方になってしまいます(笑)。
それは彼らが、作中に登場するまでにどんな風に生きてきた人なのか、そしてこれからどう生きていくのか、きっとこうなのかな、と想像が広がっていくからなのかなと思います。
今回は「登場シーンは少なかったけど凄く浮かぶ!」とノリノリで書かせていただいたキャラクター4名を改めて紹介させていただきます。
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まずはハミルトン。
ハミルトン | 『宇宙兄弟』公式サイト
NEEMO訓練で登場した、ムッタたちの宇宙飛行士の訓練を手伝う潜水技術者の彼。そのふんわりした雰囲気に癒された方も多いのではないでしょうか。
いつもニコニコしていて、海が大好きで、ウミガメという“幸せのおすそ分け”を皆にしたい優しい人。
けれど海の厳しさもよく知っています。
左腕に残る大きな傷跡は、サメより恐ろしいと言われているバグラーダに噛まれた痕。
もしかしたら死んでしまう程の痛みや出血を伴ったかもしれない…そんな大きな怪我を追った彼ですが、今も海の中で働いており、海の素晴らしさを訓練に来た宇宙飛行士たちに伝えています。
それはもう“愛”ですよね。
好きなものの良さをお知らせしたい…!!
私にとっては『宇宙兄弟』もそんな一つですが、こういう気持ち、大好きなものをもっている皆さん同じではないでしょうか(*^^*)
自分が好きなものを誰かが楽しんでいたり喜んでいたり、自分も好き!といってくれる人がいたら、めちゃくちゃ嬉しいですよね~!
ハミルトンは今までも宇宙飛行士のNEEMO訓練を手伝ってきた人。
ムッタやケンジが一時期陥ってしまったような険悪さや対立もきっと何度も見てきたことと思います。
だからこそハミルトンはいつもハミルトンらしく、自分が「大好き」で「見ると幸せになる」海そのものを通じて、訓練中に起こる彼らのギスギスした(またはこれからするであろう)空気を少しでも和らげるべく、いつも笑顔と愛に満ちているのかもしれませんね。
ハミルトンは今までもこれからも、あのニコニコした笑顔と雰囲気で訓練に挑む宇宙飛行士たちを支え、海の素晴らしさを伝えているのでしょう。
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続いてはエディ・Jの息子でありブライアン・Jの甥っ子、トミー。
友人たちとデスメタルバンドをしており派手な格好をしていますが、父エディをリスペクトしている素直な少年です。
ブライアンが月に行く前訪れた時にはまだデスメタルにはハマっておらず、「恋はあんまりしていないけど勉強はしている」素直そうな少年でした。
そんな素直さを持ったまま学校の友達とバンドを結成して今に至っているトミー。恰好は派手ですが、自分が作詞した曲の歌詞を父に見てもらってアドバイスをもらい、「父さんマジリスペクト!」と嬉しそうにしている姿は、とっても楽しそうで生き生きしていますよね。
尊敬している父の宇宙イベントには必ず駆けつけたり、モニタで見守ったり。母と一緒に見守り、ギターをかき鳴らし喜ぶ姿からも父エディのことが大好きなんだなあと伝わります。
トミー、そしてエディの奥さんを見ていると、エディ一家は本当に素敵な家族なんだろうなと想像できますよね(*^▽^*)
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そして間寺役員。
ヒビトの悪口を言ったりムッタをクビにしたり…。
映画『宇宙兄弟#0』でも何かにつけムッタに厳しい態度をとっており、しかし調子が良く自分より上の立場の人間にはヘコヘコするという、会社勤めしていると必ず一人はいるな、というようななかなか憎たらしい上司でした。
しかも自分に頭突きをしクビにしたムッタが二度と自動車業界で働けないよう根回ししたり、宇宙飛行士採用試験を受験中のムッタの悪い噂を言いふらしていたりとその嫌がらせっぷりは徹底しており、正直「そこまでやるか…」というくらい序盤は本当に酷い人でしたね…。
そんな間寺役員ですが、読者にとって憎めない人となるときが訪れます。それは、宇宙飛行士となったムッタが月面ローバーの改良案の一つに「フロントナビシステム」を思いつき、その協力をかつて在籍したミラクルカーコーポレーションに相談したときのこと。
“宇宙飛行士”となったムッタに対し、間寺役員は「君のそういう素質を見抜いていた」…と、とっても調子の良いことを言うのです(これにはさすがに周囲の社員がざわつきました…)。
間寺役員の調子の良さをよく知っているムッタは、そんな間寺氏の「変わらない調子の良さ」をうまく誘導し、彼に気持ち良く協力してもらう方向へと話をつけます。
嬉しそうに輝く間寺役員の顔、そして娘の為にお父さんとして新田のサインをお願いする姿を見たら、なんだか憎めなくなってしまいました(笑)。
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最後は、手島有利。
「僕は――自分の父には逆らえますが自分のやりたいことには逆らえません」
彼のこのセリフ、そしてエピソードには胸を打たれたり共感された方も多かったのではないでしょうか。
自分のやりたいことを、両親や周囲に応援されなかった経験を持つ人は少なくないことでしょう。
閉鎖環境試験でケンジや溝口と同じB班だった彼には、前半はあまり目だったエピソードはありません。貧乏ゆすりをしてやっさんに窘められたり、最後の同意書では他の受験者に比べ記入を迷う姿が見られていました。
ケンジと溝口の対立がいよいよ悪化し、溝口がケンジを排除しようと動き出した時、やりすぎだと声を上げます。
それまであまり雑談をしてこなかったB班。ケンジや絵名、そして手島が自分のことを話し始め、B班には笑顔が増えました。
手島は地球外生命の話をケンジたちに話すことで改めて自分の好きなこと、やりたいことを再認識し、「ここで一番になれたら何だってやれる」とB班で一番優秀な成績を残します。
有利は見事第三次試験に合格し、そして辞退しました。
かつて自身も宇宙飛行士を目指して何度も試験に挑戦し、息子に「ユーリ・ガガーリン」の名前を付けて夢を託した父・手島勇吾。
そんな父の夢を叶えるべく父が敷いたレールの上を歩いてきた有利が、流されるのを辞めて自らの道を選び取ったエピソードには、自分自身の道に迷っている多くの人が勇気づけられたことと思います。
彼はエウロパ探査の計画に参加するため歩み始めました。
ムッタたち宇宙飛行士と直接会う機会はなかなかないかもしれませんが、NASAの、ムッタたちにとても近い場所で、エウロパ計画に向けて頑張っているのかもしれませんね。
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いかがでしたでしょうか?
一人一人がどんな風に生きてきて、作品で描かれた以外の「今」や「その先」をどんな風に歩んでいっているのか、歩いていくのか…。
2025年宇宙飛行士選抜試験では不合格となった福田さんや やっさんが、宇宙への道を諦めずそれぞれに進み再びムッタたちと再会したように。
あの人も、あの人も、今あそこを目指して、または変わらずにこんな風に過ごしているかもしれない。
そんな「描かれた外」を想像できる『宇宙兄弟』の“実在しているような”キャラクターたちを、これからも追いかけ、その魅力をお伝えしていけたらと思います(*^^*)
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©小山宙哉/講談社
※本連載は『宇宙兄弟』原作画像の掲載許可を得ております。
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宇宙兄弟メシ
宇宙兄弟メシ vol.1