Tree`s Garden -Riyoko Kisaki-

デザイン・WEB・漫画制作・ゲーム関連・ナレーターなどで活動する個人事業主・樹咲リヨコのサイトです

Tripnote

Tripnote

エンタメ コラム

『演劇の死』について思うこと。

投稿日 2020-03-04 / 最終更新日 2021-01-02

演劇界の重鎮、野田秀樹さんのが以下のような声明を出されました。

https://mainichi.jp/articles/20200301/k00/00m/040/211000c

『演劇の死』。私は3年前に自分のユニットを立ち上げ、演者としてだけではなくプロデュースから制作から丸々、0段階から公演を作るということを行っています。

ぶっちゃければ「やりたいから始めた」の一言に尽きますしとても小さな団体ですが、それでも今回の声明に対し、小さな劇場をお借りしている中の人として思ったことを書いておくことにしました。

最初に書きますが、演劇に留まらず、中止をしたくてしたい主催者は誰一人としていないと思います。決行を決断された団体を責める意図はございません。予期しない急な決断を迫られ、最大限配慮された上で決行されたことと思います。

公演、イベント、ライブ…。会場を抑える、スタッフを手配する、チケット販売、宣伝等など、短くても半年、長ければ2年以上をかけて皆さん準備されてきたことでしょう。そこにかかった時間を、金額を、想いを、中止に至った判断を、具体的に想像すればするほど悔しいし胃が痛くなりますよね…。

ただ、今は東日本大震災のような時の自粛ムードとは意味が違います。ウイルスは現在進行形で日本国内だけではなく世界中で拡がっており、未だ全容がよくわかっておりません。

政府の対応の遅さ、情報の順番や一部だけが自粛を要請されることには私自身も不満はいっぱいありますが、世界全体で国内でどう対応していくか、できるだけ重症患者を増やさないように、流行のピークを減らすようにという時期です。今の日本で感染者が出てしまったら劇団や役者だけでなくお客さんも劇場も責められるでしょう。

お客さんには高齢者の方もいますし、御家族が重篤化しやすい持病をお持ちの方もいるかもしれません。新型「肺炎」であり重症化しやすい方が分かっている以上、現時点で「大丈夫だよ!」と気楽に言うことはできません。誰がどういう持病を持たれているか、どういう方と同居されているかわからないからです。

私が借りている劇場は50席以下。最前列のお客さんとの距離は1mありません。「換気の悪い密閉された空間」であり、演者はセリフを喋ります。演者がキャリアになっていた場合、飛沫感染を起こす可能性はとても高いと考えられます。

基本的にお客さんが喋るということはないので、演者との距離が十分取れる前3~5列程度を無観客で行えばリスクは下げられると思います。大きな劇場は換気も良いでしょうし。

ですが小さな劇場で、公演で、もし感染者が出て「あの劇団ね」「あの劇場ね」という話が一度広がってしまったら、小さな劇場や劇団は存続が難しくなります。

これから芝居をしたい新しい人、演劇人を支えるのは町の小さな劇場です。主宰はそれらすべてを考慮し、演者だけでなくすべてにおいて「万が一」の責任を負う義務があります。

もちろんお金もすべて含めて。劇場を貸すことで生計を立てている劇場側は、予約が入っていたら劇場側から断ることは難しいでしょう。

劇場が風評被害に遭い存続が難しくなったら表現者が表現できる場がなくなります。新しい演劇人が出なくなります。そうなったときこそが本当に『演劇の死』ではないでしょうか。

演劇の密閉された独特の空間が好きです。あの空間だからこそできる表現がたくさんあります。

演劇大好きです。観に行くのも行うのも。表現をされている方々、それに関わってくださっているスタッフの方々、劇場や応援してくださる方々、そして時間とお金をかけて「観たい」と思って来てくださるお客さん。自分で始めてみて、公演を行う、それに携わる方々、誰かを魅了することができるという方々、裏方の方々の力の凄さを益々知りました。

応援してくれる人の想いの重み。信頼。それを、背負うこと。大変なことです。劇場に観に来るまで行かなくても、お祭りとかイベントとか、皆ワイワイ「芝居」を楽しまれています。

やってみたい、やっていた、そういう方も大勢います。
日本中にある、新しい、若い、小さな劇団などを応援してくださる“表現の場”。
演者だけでなくそれを支えてくれる“場”を守ることも、大切な判断ではないでしょうか。

演劇はそう簡単に死なないと思います。憎しはコロナ。

ちなみにギャラが未払いになる、そもそも安い、タダ等エンタメ系は普段から色々な問題も見聞きします。それは今回に限りません。

これを機に一度、万が一の際のギャラの取り決め、危機管理、劇団そのものの経営意識、そういうものもきちんと考える機会とすることも大切だと思います。
もちろん、そういう仕事で生活している方が困らないように国に働き掛けていくのも大切ですよね。

私は自営業でデザイン等をして生計を立てているのですが、
好きなことをやっているのだから安くても・タダでもいいだろ
という世の論調には疑問しかわかない(そういうことを言う人からはさっさと距離を置いてきた)ので、何の分野であれ「人が人間として当たり前に生きていける」世の中であって欲しいしあるべきだと考えています。

表現は、表現者だけでなくそれを支えてくれるスタッフ、場所、お客さんがあって初めて成り立ちます。

人はパンのみに生きるにあらずです。エンタメは生きる糧。絶対に必要なものです。
自分の気持ちが落ち込んでいる時、苦しい時、助けてくれるのはエンタメです。

どんな業界・業種であっても、人が人として当たり前に生きていける、そしてエンタメを余裕をもって楽しめる。そういう社会であって欲しいししたいなと綴り、締めくくりたいと思います。

感染されて戦われている方々の快癒と一日も早い事態の終息を願って。
今、最前線で事態に当たられている皆さまに敬意と感謝と労いを込めて。

エンタメに携わるすべての方々が、それを楽しみにしている方々が、心から楽しめる日よ早く来い!と強く願って。

最後までお読みいただきありがとうございました。