Tree`s Garden -Riyoko Kisaki-

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Tripnote

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コラム 宇宙兄弟

第3回『ふかぼり!宇宙兄弟~諦めない人々が道を作る~』

投稿日 2018-05-03 / 最終更新日 2021-01-02

こんにちは、樹咲です。

ゴールデンウィーク、いかがお過ごしですか?前半はお天気に恵まれましたね。
後半は荒れ模様のようですので移動や行楽、くれぐれもお気を付けください。
お仕事の皆さまは本当にお疲れ様です、ありがとうございます!

さてさて現在大好評開催中の宇宙兄弟とFabCafeのコラボレーション、皆さん行かれましたか?
4月28日、29日の貸切ファンデーを楽しまれた方も多いと思います。
私も28日の読書会に参加しとっても楽しみました。ご一緒した皆さん、お声をかけてくださった皆さん、ありがとうございました!

コラボレーションはゴールデンウィーク最終日の6日まで開催中です。ぜひぜひ、最後まで楽しんでくださいね。【宇宙兄弟×FabCafe】『宇宙兄弟メシ』潜入レポート2018☆ | 『宇宙兄弟』公式サイト祝!宇宙兄弟33巻発売! ハガードの熱いセリフで終わった32巻…ムッタたちジョーカーズの月ミッションの続きが気になるっっっkoyamachuya.com

宇宙兄弟メシFabCafe潜入レポート記事はこちら☆

今回は前回のギャラクシースパイシーバーガーのふかぼりに続き、FabCafeで提供中の一品、カルピスの牛乳割り~馬場と古谷のおかん味~をふかぼりたいと思います。【宇宙兄弟メシ】 第5回 カルピス®の牛乳割り 馬場と古谷のオカン味 | 『宇宙兄弟』公式サイト第5回 カルピス®の牛乳割り 馬場と古谷のオカン味 ※「カルピス」はアサヒ飲料株式会社の登録商標です 牛乳:カルピス®は7koyamachuya.com

カルピスといえば水派の方も多いと思いますが、牛乳で割ったカルピスは濃厚な甘さが広がりちょっとリッチな気分に。
作り方としては牛乳とカルピスを混ぜるだけの簡単メニューですが、このエピソードを宇宙兄弟メシの一つのしてどうしても書きたい理由がありました。

身体的に絶対に乗り越えられない悔しさ。

何かをやろうとしたりやってみたいと思ったとき、身体的なことや自分の努力ではどうにもできないことって意外と多くありますよね。

小学生の時にやっさんが出会った一枚の下敷きに描かれた宇宙服。
「過酷な宇宙で生きるための技術が詰まったこの宇宙服はいわば”最小の宇宙船”なのです」という一文でやっさんの人生は変わり、宇宙飛行士を目指し始めました。

なにかを目指し続けるのは大変なことです。やっさんは宇宙飛行士になるべく、あらゆる努力をしてきたと思います。
でもいざ応募しようとしたとき、どうしようもない壁にぶつかりました。
——宇宙飛行士の応募要件に、身長が足りなかったのです。

勉強や体力づくりならば、努力すれば結果が出るかもしれない。
でも身長って遺伝的なものも大きいので「こう努力すれば伸びる!」ってないですよね。

自分が頑張ればなんとなかるかもしれないことは頑張ることができますが、頑張ってもどうにもならないことが見えた場合…それはとてもとても悔しいことだなあと思うのです。

他の仕事や出来事でもあると思いますが、“宇宙飛行士”になれる条件の一つは“運”。
これは星加さんも仰っていました。
この“運”の一つに「募集があった時に受験資格が合致している」ことがあると思います。

宇宙飛行士は毎年募集があるとは限らないので、自分が受けられる年齢に募集があることはとても幸運だった。

欧州宇宙機関で最近採用された新人宇宙飛行士マティアス・マウラー氏がインタビューでこのようなことを仰っていたと記憶しているのですが、当時の記事がもう無いようですのでもし間違っていたら申し訳ありません(もしご存知の方がいらっしゃったら教えていただければ幸いです)。

上述した通り、宇宙飛行士は毎年採用があるわけではありません。
ずっと目指していても自分の条件が整っている時には募集がないこともあれば、様々な事情でそのタイミングでは受けられなくなっていることもあると思います。

やっさんは、“運”を持っていました。

どうやっても応募条件に届かなかった身長でしたが、幅広い身長に対応できる伸縮型宇宙服が開発され、次の募集の時には応募条件が書き換えられたのです。
“身長”以外は条件を満たしてきたことで、このチャンスを掴むことが出来ました。

許されたことが嬉しかった
宇宙飛行士を目指してもいいと
許されたことが

飛び跳ねて喜ぶやっさん。

自分の努力ではどうにもならず『挑戦すらできなかった』ことが変わり『挑戦することができる』ってとても嬉しいですよね。

そしてその『挑戦することができる』ようになった背景には、やっさんと同じように身長が低いことで最初から宇宙飛行士を目指すことができなかった馬場教授がいました。

自分は行かれなかったけれど、自分と同じコンプレックスを抱く人がいつか宇宙に行かれるようにと研究と開発を続けてきた結果が伸縮型宇宙服。
それが登場したことでやっさんは宇宙を目指すことができるようになりました。

古谷君、僕は君がうらやましいで。
まだ君はこれを着て宇宙に行けるチャンスがたっぷりあんねんから。

もし今回選ばれへんかっても諦めることないで。宇宙飛行士になるチャンスは昔より広がった。

君はそういう時代に生まれた。あとは君次第や。

自分は目指すことができなかった場所へと挑戦できるうらやましさ。
そして、今回選ばれなくてもまだこれからたっぷりとチャンスがあるという激励。
馬場教授の優しさと力強いまなざしに心打たれますね。

突然ですが、実は私は小学生の頃にプロ野球選手になりたい!と思った時期がありました。すぐに周りから「なれないよ」と言われたので、やっさんほど強く深く目指す前に諦めてしまいましたが…。

野球に詳しいとかどこかのファンだったのかというとそうではなく、小学2年生の時、単純にクラスの中で一番速い球と遠い所へボールを投げられたことがきっかけで「自分が“一番”になれることがある!」という喜びからきた発想だったと思います。

でも、小学2年生の私は「目指してみよう、頑張ってみよう」と思ったその気持ちをすぐ捨ててしまいます。それは

女の子はプロ野球選手には「絶対に」なれないから無駄だよ。

と言われたからでした。
(ちなみにこうして頭ごなしに「Want」や夢を否定する人をドリームキラーというそうです。これは『宇宙兄弟 「完璧なリーダー」はもういらない。(長尾彰さん著)』に書かれております。この本の感想は現在執筆中でもう少しお待ちください)

子どもの言うことをどれだけ周りが本気にしていたかわかりませんが、周囲の誰に言ってもこう反応された小学生の女の子が「やめよう」と思うには十分でした。

あきらめない人々が道を作る

今でこそ女子野球も女子サッカーもありますが、当時を振り返れば野球もサッカーも完全に男性の世界でした。サッカーに至っては、Jリーグすらまだ発足していない時代です。

でも、今当たり前になりつつあるものには必ず先駆者がいます

性別が女性であっても野球選手やサッカー選手を目指せるようになったのは、私と同世代のあの頃子どもだった女子たちと、その女子たちを応援しようとしてきた大人たちが頑張ってきたから繋がっているに他なりません。
試合には出られなかったけれど、未来へと向けて繋げようとしてきた方も大勢いらっしゃることでしょう。

宇宙飛行士も、毛利さんが行かれた頃はまだ“職業”として目指せるような位置ではなかったはずです。
それでも宇宙飛行士を目指し「いつか宇宙飛行士採用の募集があった時のために」と努力を続け、募集のタイミングを掴んだ方々が挑戦し、宇宙への切符を手に入れられたのではないでしょうか。

そして宇宙飛行士となられた方々や宇宙開発に携わる方々が常に仰っているように、これからきっと誰もがもっと気軽に宇宙を目指せる時代が来るのだろう、来て欲しい、と思います。

『宇宙兄弟』の中では身長が応募条件に届かず挑戦できなかった馬場教授が、やっさんへ「宇宙を目指せるための扉」を作りました。
馬場教授がたくさんメールやらファックスが来たと言っている通り、やっさん以外にもこの伸縮型宇宙服の誕生を待ち望み、これによって宇宙を目指せる人が増えたことでしょう。

JAXAの宇宙飛行士採用試験は落ちてしまいましたが、諦めることなく宇宙飛行士を目指し進み続けてきたやっさんは、ムッタたちとの試験の数年後に民間会社スイングバイの有人宇宙飛行士募集に応募し見事採用、訓練に進んでいます。

宇宙飛行士を目指し閉鎖環境試験を共に過ごした仲間が、ムッタ打ち上げの応援に駆け付ける。痺れるシーンですよね!

身長が低いことで宇宙飛行士応募条件に満たず応募すらできなかった馬場教授が伸縮型宇宙服を開発し、同じように身長が低く今まで目指せなかった人が「宇宙へ挑戦できる」間口を広げました。

かつて共に宇宙飛行士を目指した福田さんらが作るロケットで、その伸縮型宇宙服を着たやっさんが近い将来宇宙へ行きます。

そして民間の有人ロケットが宇宙に行くようになることで、宇宙産業が活発になり、民間人も気軽に宇宙へ行ける…。

『宇宙兄弟』ファンとしても、『宇宙』ファンとしても、そんな光景がこの先見られることを願ってやみません。

次の人へ世代へ、そのまた次の人へ世代へ、技術や想いが繋がっていく。

現実も本当にそうですよね。インフラや医療、上述した野球やサッカー、娯楽に至るまで。
この馬場教授とやっさんの話を読んで、私たちの生活はいつだって「あきらめずに挑戦してきた人々とそれを応援し支えてきた人々」が作ってきたのだなと改めて気付くことができました。

同時に、何かに挑戦している人を応援できる自分、やりたいことのチャンスが回ってきた時に「準備万端!」と挑戦できる自分でありたいなと思うのでした。

たくさんの勇気や気づきをくれる『宇宙兄弟』。
ゴールデンウィークにもう一度1巻から読み直してみるのも良いかもしれませんね。

©小山宙哉/講談社
※本連載は『宇宙兄弟』原作画像の掲載許可を得ております。