Tree`s Garden -Riyoko Kisaki-

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Tripnote

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コラム 宇宙兄弟

第4回『ふかぼり!宇宙兄弟~自分の判断で信じるということ~』

投稿日 2018-06-01 / 最終更新日 2021-01-02

こんにちは、樹咲です。
6月に入ってしまいました!…ということは、もう2018年も半年を過ぎたということですね。月日というのは本当にあっという間ですね。

と、いうことは!12月後半から約半年間ISSに滞在された新世代宇宙飛行士のお一人、金井宣茂宇宙飛行士がまもなく帰還です!
10月26日に横浜で行われた金井さんの壮行会を兼ねた新世代宇宙飛行士3人のイベントが、もうずいぶん昔の事のように感じてしまいます。
当日のイベントレポートは、以下をご覧くださいね。

ISS長期滞在予定の金井宇宙飛行士☆『SPACE MEETS YOKOHAMA きぼう、その先へ』でその想いを語る! | 『宇宙兄弟』公式サイト

そしてそして!金井さんの帰還はYoutubeでライブ中継されます!
放送予定は6月3日21:15~22:15。

日曜日の夜ぜひ皆さんで一緒に帰還を見守りましょう!(o^-^o)

金井宣茂宇宙飛行士が搭乗するソユーズ宇宙船(53S/MS-07)帰還ライブ中継 / Live coverage of the Soyuz (53S/MS-07), the spacecraft carrying astronaut Norishige Kanai | ファン!ファン!JAXA!

さて金井宇宙飛行士と『宇宙兄弟』のある登場人物には、大きな共通点があります。もちろん「宇宙飛行士」という以外で…。

皆さん、わかりましたでしょうか?
ある登場人物とは伊東せりか、そして、共通点とは「お医者さん」であること。

せりかさんが医師として従事してきた内容としては金井さんよりも古川聡さんの方が近いと思いますが「高品質タンパク質結晶生成実験」を始め「健康長寿のヒント」を探った金井さんの活動は、彼女が『宇宙兄弟』の中で行った実験とかなり近いのではないでしょうか。

そして、せりかが感じた帰還後の地球…。髪や舌の重さを、金井さんはどんな風に感じるのでしょうね。6月3日が、とても楽しみです。

さて第4回は、そのせりかさんをずっと見守ってきた、『たぶさんのハートコロッケ』の店主たぶさんこと多部さんを中心にふかぼりたいと思います。

たぶさんのハートコロッケ | 宇宙兄弟メシ | 樹咲 リヨコ | cakes(ケイクス)

せりかを取り巻いていた世界。

『宇宙兄弟』メインキャラクターの一人、伊東せりか。
彼女は明るくて健康的、強い意志を持ち、子どもの頃に決めた道を真っすぐに歩いてきた人です。超がつくほどの大食いキャラクターである、という点も、親近感がわくポイントの一つですよね。

そんな彼女ですが、子どもの頃は「近所でもちょっと変わった子」として有名でした。

不思議な歌を歌いながらダンスの練習をして踊りながら歩いていたり。蝉の抜け殻を袋にいっぱい持っていて、売り物の服にくっつけてしまったり。自転車の練習であちこちぶつけながらそのままお店に突っ込んで行ったり。彼女にだけ見えている何かを頬張って食べたり。

彼女の行動に対して周囲の大人たちは「変わった子」としてヒソヒソと噂をし、遠巻きに見ているだけ。

元気いっぱいの彼女。

お店の売り物にイタズラしたり、自転車でお店に突っ込んでいったり…“それはやってはいけないよ”、という行動はありました。蝉を売り物に付けられたお店の人はせりかに対し「ダメでしょ」ときちんと伝えています。

しかしいつも噂話をしている大人たちはやっぱりヒソヒソと、せりかを「変な子」と言っているだけで本人たちは遠巻きに見ているだけ。それはダメだよと叱ることも教えることも、彼女自身を知ろうともしません。

パチンコ屋の大きな鏡の前でダンスのソロライブを公演し、彼女にしか見えない何かを頬張って食べたり。自分の噂のことなど知らず、楽しそうに毎日を過ごすせりか。
商店街でコロッケ店を営んでいる多部こと“たぶさん”は、そんな噂を常に耳にしながら、小さなお客さんでもあるせりかの行動をいつも見守っていました。

ある日公園のベンチで蝉の羽を並べて遊ぶせりかに、たぶさんは声を掛けます。
これは私の想像ですが、たぶさんはこの時、せりかがどういう子なのか知ってみたい・知ってみようと思ったのではないでしょうか

どんな噂か知っていながらも、たぶさんは「そういう子」という先入観を持たずせりかと向き合い話しました。

蝉の羽でビックバンを作り、たぶさんの福耳に地球と月を描く。「宇宙が好き」というせりかは、コロッケ店から見守っていた通り元気で楽しそうな子でした。

私は最近ご縁があって専門学校の講師をしているのですが、自分より一回り以上年の離れた若い子たちが『元気で楽しそう』なことに私自身がとても元気をもらいます。
週に1回だけの授業ですが、大人が子どもを傷つけるようなニュースが溢れる日々の中で、自分よりもずっと若い子どもたちが不用意に傷つけられないように、と強く思うようになりました。

「宇宙が好きか?」「うん!」と答えるせりかに「こことはまるで別世界だろうな」と呟くたぶさん。この「別世界」には“彼女をよく知りもせずに嫌な噂を立てる人たちがいない世界”も含まれていたのかもしれません。

せりかが宇宙飛行士となりいよいよ打ち上げとなった時、よっこい商店街は「我街のアイドル!」と横断幕を掲げ、公園でパブリックビューイングが行われ多くの人が集まり盛り上がりました。

この盛り上がりを見ながら、たぶさんは少し遠くからせりかの子ども時代のことを思い出し、昔彼女に描いてもらった“福耳のピアス”を触りながら感慨深く打ち上げを見守ります。

せりか本人が大人になる過程で自分に関する“噂”のことを知ったかどうかは定かではありませんが、噂を知りながらもそれを胸にしまい成長を見守り続けたたぶさんの想いは特別なものだったのではないでしょうか。

世の中に溢れる“何となくの悪意”。

“宇宙飛行士・伊東せりか”の誕生は、地元の人にとって大きな誇りと喜びであったことでしょう。

しかし、せりかは再び“世間の悪意”にさらされることになります。

これは何とかして『宇宙に行った薬』という実績が欲しいある製薬会社の人間が、自分の製薬会社は断られたのに別の製薬会社とはやりとりをしていることが気に入らず、彼女を陥れようと作り上げた“完全なデマ”でした。

この記事が出て、商店街はすぐに横断幕やポスターを外しにかかります。
“我街の誇り”が一瞬にして変わった瞬間でした。

世の中の出来事は、当事者でもない限り“真相”などわからないことが殆どです。そして、直接の知り合いでもない限り、その人の“本当の姿や性格”など知りません。

それでも、人は誰かや何かの“噂”によって簡単に誰かを貶めたり掌を返したりします。

せりかの母マチコは、周囲でヒソヒソと交わされる悪意のある噂話を耳にしながら、背筋を伸ばし歩き続けました。

「今ニュースでやってるやつって…ウソ…よね…?」などとわざわざ確認してくる同僚に「もちろんです」と何でもないように返しながらも本当は傷ついて。
こんな辛いことはありません。

せりかの母も長く商店街で働くたぶさんも、せりかの子ども時代から宇宙飛行士となるまでの長い時間、彼女を取り巻く商店街の人々の心境や環境の変化を敏感に感じ続けていたことでしょう。

「変な子」だと噂され、宇宙飛行士になれば都合の良い部分だけを拾って盛り上がり、癒着が疑われれば横断幕を外し掌を返して、また“真実のわからない”噂話をする。
何も知らない人々が、ニュースと印象だけでネットに匿名で誹謗中傷を書き込む。
悪意というものは、いともお手軽なものですよね…。

自分の周りが日本中がせりかを“嫌な噂”で包み“悪意”を向けても、流されることなく『自分が知っているせりか』を信じ続けたたぶさん。

外された横断幕を持ち帰り、自分の店に掲げ、一人せりかを応援し続けました。

立ち止まり、自分で判断する、ということ。

現代は様々な媒体で簡単に情報にアクセスでき、意図せずとも目に耳に入ってくる時代です。そして見知らぬ誰かを簡単に傷つけることができる時代でもあります。

センセーショナルな見出しに「えー!あの人ってそうだったの?」と一瞬感じてしまうことも、「あれ、わざとこの人を貶めようとしている?」と感じる記事や呟きも少なくありません。

でも、
自分はその人のことを本当に知っているんだろうか?
そこに至るまでに何があったのだろうか?
これは、誰かが悪意を持って書いたものではないだろうか?
デマではないだろうか?

そして、
もしも自分がありもしない噂を立てられたらどうだろうか?
身近な誰かがそんな噂を立てられていたら?

噂や情報に飛びつき自分も悪意の一部となる前に、今一度それらのことを考えてみたいですよね。

せりかを信じた たぶさんの誇り。

昔は小判型だった、たぶさんのコロッケ。「もっとかわいい形だったらいいなあ」と言うせりかの一言から『新型』が誕生しました。

せりかたちが実験を成功させ、黒い噂にまつわる騒動は沈静化。
かつてせりかに1日に2千個売れるコロッケ屋になる、「バカ売れ御免」ののぼりを立てるのが夢と語ったたぶさん。

ISS交信イベントでせりかが「地元のハートコロッケが食べたい」と言ったことにより『たぶさんのハートコロッケ』は大繁盛。
「バカ売れ御免」ののぼりが立っているということは、きっと「1日2千個」も叶ったということなのでしょうね。

コロッケを買いにきたせりかの母、マチコは「騒動の時応援してくれたのはたぶさんだけ」と笑顔でお礼を言いに来ました。
この騒動は嬢ちゃんのおかげ、と誇らしく嬉しそうな笑顔のたぶさん。

最初から最後まで信じ応援し続けたたぶさんの笑顔は、晴れやかで本当に素敵でした。

『たぶさんのハートコロッケ』は、たぶさんの優しさが詰まった美味しいアツアツコロッケ。はふはふしながら頬張りたいですね(*^^*)

たぶさんのハートコロッケ | 宇宙兄弟メシ | 樹咲 リヨコ | cakes(ケイクス)

今回はちょっと重苦しい回になってしまいましたが、あまりにも簡単に他人を傷つけ傷つけられる時代。

たぶさんのように、周囲に流されることなく“自分自身で”判断し、不用意に他人を傷つけない、身近な人を信じることができる人間でありたいものです。

最後に、“製薬会社とせりかの黒い噂”の騒動に際し実験を止めさせようとした人々に対して茄子田理事長が言った言葉を載せて終わりたいと思います。

我々は世間の誹謗中傷やクレームのようなものを
いささか気にし過ぎではないでしょうか

人の悪口というのは

仲間内で言う人は”凡人”
口に出さない人は”賢人”

不特定多数に向けて発信する人は
”暇人”ですから

©小山宙哉/講談社
※本連載は『宇宙兄弟』原作画像の掲載許可を得ております。

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